国土交通省は去年の関東・東北豪雨などを受けて、国が管理する全国の109の水系のおよそ400の河川について、最大規模の洪水による新たな浸水想定の検討を進めています。30日は、このうち関東と信越、四国、中国地方、九州、それに福島県の15の県の20の河川と35の支流について、その内容を盛り込んだ地図が公表されました。
新たな想定では予想される浸水の範囲や深さ、それに浸水が続く時間が従来の想定を大幅に上回ったほか、堤防の決壊などで住宅が押し流されるおそれがあるなど、特に危険性が高い区域を「家屋倒壊等氾濫想定区域」に指定し、初めて公表しました。このうち、栃木県と茨城県を流れる那珂川の下流の区域では、水戸市の北部や茨城県ひたちなか市などで、浸水の深さは広い範囲で5メートルから10メートルに達し、最も深いところでは22メートルに達すると想定されています。また、川沿いの広い範囲が「家屋倒壊等氾濫想定区域」に指定され、地図上に赤色で示されています。
今回の想定を受けて、流域の各自治体では、今後、避難場所や避難経路を検討し、地域防災計画の修正やハザードマップの作成を行うことになります。
一方、当初、ことしの梅雨の時期までとしていた河川の想定の公表は、来年の梅雨の時期までにずれ込む見通しだということです。
国土交通省は「最大クラスの洪水から命を守るには確実な避難が何より重要で、流域に住む人には自分が住んでいる地域の危険性を知ってもらい、日頃から避難場所などを確認しておいてほしい」としています。
公表された20河川
今回、最大規模の洪水が起きた際の浸水の想定と、特に危険性が高い、
「家屋倒壊等氾濫想定区域」が公表されたのは15の県の合わせて
20の河川とその支流です。
【関東】
▽栃木県と茨城県を流れる「那珂川」と支流の「涸沼川」、「藤井川」、
「桜川」、
▽茨城県を流れる「久慈川」と支流の「山田川」、「里川」、
▽神奈川県を流れる「相模川」のうち河口に近い下流の区間、
【信越】
▽新潟県を流れる「阿賀野川」と支流の「早出川」、
▽新潟県を流れる「信濃川」のうち中流と下流の区域と、支流の「魚野川」、
▽新潟県を流れる「関川」と支流の「保倉川」、
▽長野県を流れる「千曲川」と支流の「犀川」。
【東北】
▽福島県を流れる「阿賀川」と支流の「日橋川」。
【中国地方】
▽島根県を流れる「高津川」と支流の「匹見川」、「高津川派川」、
「白上川」、
▽山口県を流れる「佐波川」。
【四国】
▽徳島県を流れる「吉野川」と支流の「旧吉野川」、「今切川」、
▽徳島県を流れる「那賀川」支流の「桑野川」、「派川那賀川」、
▽高知県を流れる「仁淀川」、
▽高知県を流れる「四万十川」と支流の「後川」、「中筋川」、
▽愛媛県を流れる「肱川」と支流の「矢落川」、
▽愛媛県を流れる「重信川」と支流の「石手川」。
【九州】
▽福岡県を流れる「遠賀川」と支流の「彦山川」、「犬鳴川」、
「西川」、「黒川」、「笹尾川」「八木山川」、「穂波川」、
「中元寺川」、「金辺川」、
▽大分県を流れる「大分川」と支流の「七瀬川」、「賀来川」、
▽佐賀県を流れる「六角川」と支流の「牛津川」、「武雄川」、
▽長崎県を流れる「本明川」と支流の「半造川」。
このほか、▽関東を流れる「荒川」のうち国が管理する埼玉県と
東京を流れる区間と、支流の「入間川」、「越辺川」、「小畔川」、
「高麗川」、「都幾川」、
▽東京と神奈川県を流れる「多摩川」と支流の「浅川」、それに
「大栗川」については浸水が想定される区域や深さ、継続する時間が
公表され、「家屋倒壊等氾濫想定区域」についてはさらに検証が必要として、
今後、改めて公表される予定です。
想定を超える大雨や台風による大規模な水害が相次いでいることを受けて、
国土交通省は去年から全国の主な河川ごとに最大規模の洪水を想定して
浸水予想などを示した地図の作成を進めてきました。
当初は5年間をめどに想定を公表する予定でしたが、去年9月の関東・
東北豪雨の際に茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊し、多くの住民が浸水
した地域に取り残されたことを受けて、甚大な被害が出るおそれがある
全国の70の水系、
250余りの主な河川について、住宅が押し流されるなど、特に危険性が
高い区域を指定し、ことしの梅雨の時期までの公表を目指してきました。
30日公表された20の河川の想定の詳しい内容は、国土交通省の
各地の地方整備局や河川事務所のホームページで確認することができます。
国土交通省はこのあとも順次、公表を行うことにしていますが、
当初、ことしの梅雨の時期を予定していた河川の公表は、来年の梅雨の
時期までにずれ込む見通しだということです。
一方、今回の想定を受けて、市区町村には法律によって、今回の新たな
想定をもとにしたハザードマップの作成や地域防災計画に避難場所や
避難経路を盛り込むことが必要となります。流域の自治体どうしが協議会を
設ける動きもすでに出てきていて、今後、大規模な水害の際に自治体の外へ
避難する広域避難をどう進めるかなどの課題について
検討していくことになります。